Direct Borohydoride Fuel Cell (DBFC)とは


当社で研究・開発を行っているDBFCとはPEFC (Polymer Electlyte Fuel Cell:固体高分子形燃料電池)に代表されるガス状水素を利用する燃料電池とは異なり、水素を含んだ水素化ホウ素化合物の水溶液を燃料として、直接発電反応が行われる燃料電池です。
この水素化ホウ素化合物は水素の含有量が非常に高く、NaBH4を例にとると10.6wt%の水素を含んでいます。また結合している水素は
H-プロタイド状態で存在しているという非常に興味深い物質です。発電の仕組み

DBFCの発電の仕組みは右の図のようになっていて、1.64V(水素-酸素燃料電池では1.23V)という高い理論起電力を有しています。また、燃料が液体であるので高圧ガスに較べて取扱いが容易であり、液体のまま発電反応するので水素ガスへの改質のために200〜300℃という高温にする必要もありません。
さらにDBFCは燃料極の触媒には非常に高価な白金(Pt)ではなく、安価な水素吸蔵合金(MH)にMERIT/KUCELグループの独自技術であるフッ化処理を施したフッ化水素吸蔵合金(F-MH)を用いているので、低コスト化が可能になります。
このようなことから、小型の携帯電子機器用電源としての用途が非常に有望です。


DBFC研究開発状況


 2000年度にDBFC(当時はまだこのような名前はありませんでした)に着目し、2001年度から本格的な研究開発に着手し、放電機構の解明、科学技術振興事業団(JST)のモデル化事業(2001年7月〜2002年3月)により、10W級スタック(10セル)の試作に成功しました。(2002年10月新聞発表)(左下写真、下中図)
2002年度からは電極面積のスケールアップを行い、100W級のスタック(右下写真)の開発に取り組んでおり、さらに2003年度から3年間にわたって実施されたNEDO「大学発事業創出実用化開発事業」(TAMA TLOと工学院大学間の委託研究開発)に参加し、その実用化開発を目指すことになりました。また、燃料、酸化剤(空気)の供給などに補助動力を一切使用しない、数WクラスのマイクロDBFCの開発にも取り組んでいます。


 また、水素化ホウ素化合物の水溶液を直接発電反応に使用するのではなく、触媒により加水分解させることによって水素ガスを発生させ、PEFCに水素ガスを供給するという、水素貯蔵・供給法に関する研究開発、および反応後に生成されるメタホウ酸塩を再び水素化ホウ素化合物へと還元する再生法に関する研究開発ついても当社で並行して研究開発を行っています。